2001年宇宙の旅 映画史に残る哲学的SF作品。今作の真のテーマとは?

【あらすじ】

スタンリー・キューブリック監督作。
地球から月へ、そして木星へと旅立つ人類。探査船ディスカバリー号の乗組員は淡々と日常業務に取り組んでいたが、コンピュータHAL9000に異変が起こりはじめ…。

【見どころ】

1968年公開作であるにもかかわらず、いま鑑賞しても圧倒的な映像美で観る者を宇宙へ引き込む。その異次元の宇宙体験だけでも観る価値は十分過ぎるほど。ただし、突如として謎の石板モノリスが現れたり、ラストシーンが宗教的で突き抜けているため、ストーリーやテーマを理解するのは困難。というか不可能であるため「今作は神について描いたもの」など、様々な解釈がなされている。

だがキューブリックの過去のインタビューやシナリオなどを読み解くと「人類の輝かしい進化」をテーマにして製作されたことが分かる。

※以下、映画評論家・町山智浩氏の著書「映画の見方が分かる本」を参考に要約。

■なぜストーリーが分かりにくいのか?
今作は本来ナレーションがあった。キューブリック自身が書いたシナリオにはストーリーを説明するナレーションが要所要所に入っている。ところが映画がほぼ完成した段階で、キューブリックはナレーションを使うことをやめた。
科学顧問として企画段階から製作に関わっていた天文学者のフレデリック・I・オードウェイは、完成披露試写を観て驚き、ナレーションがないと意味が通じないと抗議したが、キューブリックは無視した。理由は故意に分かりにくくするためだ。

キューブリックは1968年9月号「プレイボーイ」のインタビューで下記のように答えている。

「わたしが狙ったのは視覚的体験だ。言葉で整理することを避けて、潜在意識に直接突き刺さるエモーショナルで哲学的な映画だ」
「もしレオナルド・ダ・ヴィンチがモナリザの絵に、彼女が微笑んでいる理由を書き添えていたら、我々はあの作品をこんなに褒め称えていただろうか?」

彼の戦略は予想以上の効果を上げ、意味不明のシーンを観て観客は幻惑し、作品とキューブリックは神格化されていった。
その背景として、公開当時のアメリカではキリスト教的価値観への不信感の高まりや、伝統など既成の価値観を否定するヒッピーたちがムーブメントをおこしていたことにある。彼らによって今作はたちまちカルト・ムービーとして祭り上げられた。

■そして今作の本当のテーマは?
作品の神秘的なイメージから「神についての映画である」と解釈する人が多いようだが、キューブリックは神を信じていない。
シャイニング」製作中に原作者のスティーブン・キングに電話で「君は神を信じているのか?」と質問し、キングが「当然だ」と答えると電話を切り、小説に書かれた神秘的要素を映画から排除してキングを怒らせたエピソードは有名だ。

ではテーマは何なのか?19世紀の哲学者ニーチェの著書「ツァラトゥストラはかく語りき」の中にある「人類の進化」をモチーフに描いているのだ。
ニーチェは19世紀末に「神は死んだ。生きることに意味はない」と公言。そして上記の著書の中で、人間には3段階の変化があると説いている。
それは神を畏怖し、モラルを背負わされた近代以前の人間を表す「ラクダ」。次は自我に目覚め、自由意思で神に立ち向かう近代以降の科学の時代の人間を表す「ライオン」。そして神に変わる全く新しい価値を生み出す「幼な子」。

今作のラストは「幼な子」が地球を見つめるシーンと共に、リヒャルト・ストラウス作曲のあのテーマ曲「ツァラトゥストラはかく語りき」が高らかに鳴り響く。この曲はニーチェの同名著書の中に登場する主人公ツァラトゥストラが、朝日に向かって語りかける場面を表現している。


今作について、さらに詳細を知りたければ、 「映画の見方がわかる本—『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで (映画秘宝COLLECTION) を是非、ご一読を。

  • 【監督】スタンリー・キューブリック
  • 【出演】ケア・デュリア/ゲイリー・ロックウッド/ウィリアム・シルヴェスター
  • 【日本公開】1968年
  • 【原題】2001: A SPACE ODYSSEY

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